この世に存在するすべてのメモをすぐ消したくなる人(かつObsidianを全く知らない人)に向けて、Obsidian入門エントリを書こうと思う。そんな人がいるかどうか、このサイトを見られるかどうかは謎につつまれている。
ビジュアライズされた入門エントリはたくさんあると思うので、ここでは私のように御託を並べるのがすきな人間に向けて、御託をぶつけて説得していきたい。5,000文字あります。
# メモが好きなのに消したい!
先日書いたが([[Obsidian publish契約した - 2025-10-04]])、自分はメモが大好きなのに、書いたメモを消したくなってしまう癖がある。デジタル・アナログは問わない。
続かない、、ならまだいい。ある程度時間が経つと自分のメモを見返すのが嫌になってしまう。
> 嫌になる、というのはわからない人にはわからないかもしれない。
過去に自分が書いた内容がごちゃごちゃで汚く思える。何を書いているかわからない、書いている内容が魅力的に思えなくなり、こんなものは恥であるから一刻も早くこの世から消し去ったほうがいいと思う。
[[Obsidian publish契約した - 2025-10-04]]
新しくノートをつくっては破り捨て、シュレッドし、燃やすゴミにしてきた。あるいはアカウントを消し、googleパスワードマネージャーからも完全にID情報を抹殺してきた。
メモを書いた時点でメモとしての役目は終えている、という考え方もあると思う。シンプルに何かを書くのは楽しい。
ただそこがメモ術を愛した人間の性というのか、どうしてもメモを未来で活用したいと考えてしまう。過去のメモが積み重なって新しいアイディアになったり、未来の自分に気づきを与えてくれたらどんなにいいだろう(世にあるメモ術・ノート術はだいたいこういう輝かしい状態を提示する)。
まあそれは理想的な状態だとして、せめて消したい衝動を抑えることはできないものか。今は嫌だけど、いつかいい感じに活用できる日が来るかもしれないのだし⋯⋯
# なぜ消すの?
なぜこんなことが起きてしまうのだろう。自分なりに考えてみると、いくつか「嫌になる」ポイントがある。
### 昔のゴミファイルが嫌になる
メモには色んなものがあるのだが、未来の自分から見てどうしても「ゴミ」としか思えない書き散らしも存在する。
- **お気持ち**:モーニングページとか、ジャーナリングとかいろいろ呼び方はあるけど、とにかくそのときの感情を何も考えずに書き連ねた記述。
→だいたい暗いことが書いてあるのでいやだなと思って消したくなる
- **明らかに認識が間違っているor不十分である**:あとで調べようと思って放置しているとか、調べたけれどwikipediaのコピペだけとか、普通に間違ったことが書いてあるとか
→調べた文脈やそれを読んで自分がどう思ったか書いてないとこれwikipediaでまた調べればよくね?となって消したくなる
- **読んでいてつまらない**:完了タスクの羅列や、いま運用していないタスク管理やプロジェクトのための記録など
→これ記録しておく意味なくね?となって消したくなる
### 使い方が定まっていない
たとえば読書ノートをつけよう!と思ったり、その翌週には毎日何を何ページ読んだか記録しよう!と思ったり、GTDをやるから収集フェーズをやるぞ!と思っていっぱいやりたいことが書いてあったりはたまたその翌週にはすべて忘れて新しいページに調べた英単語が載っていたりする。
→きれいにやり直したい、やり直せばうまくいくはずと思って消したくなる
### 複数のノートの運用がうまくいっていない
前項と似ているが、どこに何が書いてあって運用ルールがあって、、というのを考えるという工程が挟まるとメモしたかったことを忘れる。それならルールなど捨ててしまえと思って好きなように書くと、どこに何が書いてあったかわからなくなってしまう。
# それでも、Obsidianなら続く(かも)
ここまで読んで「そうそう!そうなんだよ!」と思った人がいるかは謎だが、私はそのような前項の問題点をいまだに抱えつつ、Obsidianだけは4年ほど使い続けられている。
Obsidianをどう使っているのかを簡単に説明し、メモを消したくなる衝動がどう昇華されているのか考えたい。
## Obsidianとは
Obsidianとは、マークダウンファイルのエディタ兼ビューワみたいなアプリケーションだ。ファイルは基本的にローカルに置かれたものを参照する、というのが大きな特徴(そして哲学)で、あとは内部リンクがあってwikiっぽく書けるのも特徴だと思う。
<div class="rich-link-card-container"><a class="rich-link-card" href="https://obsidian.md/" target="_blank">
<div class="rich-link-image-container">
<div class="rich-link-image" style="background-image: url('https://obsidian.md/images/banner.png')">
</div>
</div>
<div class="rich-link-card-text">
<h1 class="rich-link-card-title">Obsidian - Sharpen your thinking</h1>
<p class="rich-link-card-description">
The free and flexible app for your private thoughts.
</p>
<p class="rich-link-href">
https://obsidian.md/
</p>
</div>
</a></div>
ローカルのマークダウンファイルは生成AIに読ませやすいらしく、この1年くらい突如Obsidianが生成AIの文脈で流行ってる感あるが、基本的にはただのローカル参照できるエディタ。元々はPersonal Knowledge Management(PKM)とか、Zettelkastenみたいなことを言い出すメモ術大好き層でポピュラーだったと思う(というかいまもメインの使用層はそっちなのではないか)。
私もPKMで検索していて見つけたのが最初です。
## どう使うか
1. 何かノートをたくさん書きたいな!と思ったら新規ノートを作って書く。ノートは書き終わって満足したら該当フォルダにいれる。
2. なんかひとりごとが言いたいな!と思ったらThinoを使ってデイリーノートに書く。
それだけ。覚えやすい!
## もっと詳しく: 最初の画面
これが私のVaultを開いたときの画面だ。左がファイルやフォルダの構成がわかるバー、右がファイルの編集画面となっている。
![[Pasted image 20251023144213.png|example-image]]
*Fig.1 私のVaultをObsidianで開いた画面*
VaultというのはObsidianがファイルを保存・参照する大元のフォルダを指す。Obsidianはローカルファイルを参照するのが基本なので、デスクトップでもどこでも好きなところに1個フォルダを置いて、そこを「Vault」として指定する。そうするとそこに作ったマークダウンファイルがどんどんたまっていく。
マークダウンファイルといっても見出しや表の記法がちょっと独特なくらいで、ほぼテキストファイルと見た目は一緒。いわゆるwindowsのメモ帳でもほとんど違和感なく読める。
![[Pasted image 20251023144344.png|example-image]]
*Fig.2 このファイルをWindowsのメモ帳で開いた様子*
マークダウンファイルを開いて記法どおりに表示できるソフトはObsidianに限らずいっぱいあるので、もし将来Obsidianを使わなくなってもファイルを見られなくなることはまずない。
ObsidianのCEOであるSteph Angoのエッセイでは、「ファイルを百年後も参照できる形にするべき」という哲学が語られていた。
<div class="rich-link-card-container"><a class="rich-link-card" href="https://stephango.com/file-over-app" target="_blank">
<div class="rich-link-image-container">
<div class="rich-link-image" style="background-image: url('https://stephango.com/assets/covers/file-over-app.png')">
</div>
</div>
<div class="rich-link-card-text">
<h1 class="rich-link-card-title">File over app</h1>
<p class="rich-link-card-description">
If you want to create digital artifacts that last, they must be files you can control, in formats that are easy to retrieve and read. Use tools that give you...
</p>
<p class="rich-link-href">
https://stephango.com/file-over-app
</p>
</div>
</a></div>
## もっと詳しく: 何かノートをたくさん書きたいな!と思ったら
1. 新規ノートを作成する。
![[Pasted image 20251023144435.png|example-image]]
*Fig.3 新規ノートを作成した状態*
2. いっぱい書く。
![[Pasted image 20251023144540.png|example-image]]
*Fig.4 ノートにいっぱい書いた状態*
3. 下書きファイル、今書いているファイルは下図のようにフォルダ外(root)に置いてある。ここに出ているものはなんとなくまだ書いているものや、記録を取っているもの。
![[Pasted image 20251023144723.png|example-image]]
*Fig.5 ドラフトはフォルダ外にいれているという説明のための写真*
4. 書き終わって満足したら、フォルダに入れる。
### 何が嬉しいか
- 何にいまフォーカスしてて、何の記録を取っているか一目でわかる
==運用がほぼ必要ない==。タグのアップデートとかもいらない。目に入るものが更新すべきもの。もういいかなと思ったらフォルダに入れて見えなくすればよい。
- Archiveフォルダが作れる(==あとで読みたくないファイル==は見えなくできる)
とにかく消したくなるのは「該当ファイルが目に入る」ことが問題なので、ファイルが目に入らなければいい。ということで、私は嫌になった/嫌になりそうなファイルを全部Archiveフォルダに入れて、さらにFile Exploler++というプラグインで非表示にしている。
もしなんか綺麗にしたい……と思ってもとりあえず全部を非表示にして、それから考えることができる。
![[これがこうなる.png|example-image]]
*Fig.6 このフォルダがこのようにきれいになる*
- さまざまなSNSで書く文章をひとつにできる
マークダウン記法の汎用性が比較的高いので、さまざまなSNSで書く文章を最初にObsidianでドラフトできる。自分の文章がインターネットに散逸しないし、「なんか投稿したいな」と思ったらObsidianを噛ませることで使う契機にもなる。
- 間違っていたら追記すれば良い
何か==間違っている記述==があれば、コールアウトや打ち消し線であとから追記すればよい。マークダウンなので、そういう記法が簡単なのもいいと思う。
## もっと詳しく: 何かひとりごとを言いたいな!と思ったら
1. Obsidianのプラグイン(有志が作っている拡張機能)であるThinoでつぶやく。
![[Pasted image 20251023152226.png|example-image]]
*Fig.7 Thinoの起動画面*
thinoは旧twitterのようなつぶやきSNSライクのUIで、デイリーノートに時刻付きの記述を残すことができる。
タグも付けられるし、リンクも貼れる。
![[Pasted image 20251023152402.png|example-image]]
*Fig.8 Thinoでタグとかリンクをつけたときの様子*
dataview(これもプラグイン)でうまいことやると、タグを付けた記述を1行ずつ集計することができる。
![[Pasted image 20251023152617.png|example-image]]
*Fig.9 Thinoの記述をタグで集計した様子*
(どうやって集計するかの参考リンク)
<div class="rich-link-card-container"><a class="rich-link-card" href="https://note.com/8amanami/n/n1b9b8857227a" target="_blank">
<div class="rich-link-image-container">
<div class="rich-link-image" style="background-image: url('https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120599153/rectangle_large_type_2_87107fa1c6c86ffe396bb8310a362725.png?fit=bounds&quality=85&width=1280')">
</div>
</div>
<div class="rich-link-card-text">
<h1 class="rich-link-card-title">適当にログを集計したい[Obsidian memos x dataview]|やまなみ</h1>
<p class="rich-link-card-description">
何とかObsidianを使いこなそうとしているものです。 Obsidian memosはいいぞ Obsidian Memosを導入してから日々のログをとても手軽にとれるようになってきました。 まずは情報の取捨選択をせず、1日の出来事を見返せるようにと何でもかんでもログに取っています。 Obsidian memosの一部分 データをまとめたい欲 ログが溜まってくると性格的にまとめたくなってきました。 調べてみるとTrackerやHeatmapといった可視化プラグインが存在しており、 筋トレのログをつけてみたのですが、memosではなくデイリーノートを開いて特定の記法で書か
</p>
<p class="rich-link-href">
https://note.com/8amanami/n/n1b9b8857227a
</p>
</div>
</a></div>
2. 放っておいて、必要になったら検索するなり集計する。
### 何が嬉しいか
- ==お気持ち==がデイリーノートに分離されて、他のノートを汚染する可能性がない。
- もし==使い方が定まってなく==ても、とりあえず記録だけすれば大丈夫。あとで検索かタグで拾えばよい。
- ==あとで読んでつまらない記述==も、Thinoからデイリーノートに書いて、デイリーノートを非表示にすればよい。
- ノートのタイトルを考える必要がない。ただ脳をそのまま出力すればよい。
- リアルタイム実況ができるので、==何かを調べたときにすぐその経緯などをばーっとメモ==できる。何で調べたかとか、何を見て不思議に思ったのかとか、自分の中の文脈を書いておくと覚えやすいしあとから読んだときに納得できる。
## Appendix A : 全部消す発作への防波堤 - 同期ラグ
さらにObsidianのよいところとして、何度も言及した「ローカルファイルの参照」という特徴がある。
サービス側のクラウドに保存されるわけではなく、ファイルの実体を自分で持っておけるので、将来もしObsidianが更新されなくなっても(あるいは異なるサービスに移りたくなっても)安心というわけだ。
同時に、複数端末での同期は少し工夫が必要となる。ただ、ここが「メモ消したい」発作にはかなりいいバックアップになっている。
私はWindows-Android間でObsidianを使っているが、この同期にGoogle driveとFolder sync(ローカルとクラウドのファイルを同期するアプリ)を使っている。リアルタイム同期ではなく、毎日定時の同期と必要であれば手動同期を駆動する。下記リンクを参照。
<div class="rich-link-card-container"><a class="rich-link-card" href="https://pouhon.net/obsidian-sync/6796/" target="_blank">
<div class="rich-link-image-container">
<div class="rich-link-image" style="background-image: url('https://pouhon.net/wp-content/uploads/2020/10/obsidian_logo.jpg')">
</div>
</div>
<div class="rich-link-card-text">
<h1 class="rich-link-card-title">Obsidianの複数端末同期方法まとめ (Mac/Windows/iOS/Android)</h1>
<p class="rich-link-card-description">
現在、ノートアプリObsidianのデータ (Vault) をiOSやAndroidを含む複数端末で同期する方法は、大きく分けて5つあります。 しかしなぜこんなにも多くの手段が台頭するのか。そしてあなたに最もマッチする方法とは何なのか? と
</p>
<p class="rich-link-href">
https://pouhon.net/obsidian-sync/6796/
</p>
</div>
</a></div>
これによって、もし仮にどちらかのVaultで嫌になって全部メモを消したとしても、しばらくは同期ラグでどちらかの端末にファイルが残るようになっている。
「メモ全部消したい」はたいてい一時的な発作なので、何時間かして落ち着いたら何をやってしまったんだと思うことが多い。そうなったときはもう一度別の端末から復元すればよい。残機2システム。
# Obsidianめっちゃいい
おわかりいただけただろうか(はたして……)。
こんな感じで、Obsidianはメモを消したくなる、すぐ飽きちゃうというタイプの人にすごくいいアプリケーションだと思う。ほぼ完全無料だし。
最近のビッグアップデートで、「base」というNotionみたいなデータベースっぽい機能が一般ユーザーも使えるようになった。これもめっちゃよくて、なんか読んだ本の表紙とか綺麗に並べられてすっごい楽しいのでやってみてほしい。
もしObsidianをやってみて、やっぱ消しちまったわwってなってもそれはそれで面白いのでインターネットで書いてほしい。
そしてみんなでもっとメモ術やノート術や文房具やPKMの話をしよう。
インターネットがメモ術やノート術や文房具やPKMの話で満ち溢れますように。