>[!info] Information >​この記事は、[Obsidian Advent Calendar 2025](https://adventar.org/calendars/11440)の14日目の記事です。 >13日目: soiro_さんの[Obsidianの閲覧性を高めるためにやっていること(CSS・プラグイン)](https://zenn.dev/soiroooo0/articles/b4de98abde5044) >15日目: handlenameさんの[2025年のタスク管理](https://blog.handlena.me/entry/2025/12/task-management/) ​こんにちは、[[tobusuka]]と申します。Obsidianを使い始めて3年ほどになります。 Obsidianにゴミファイルが溜まっていくことってありますよね(ありませんか?)。 特に生活直結でObsidianを使っているとゴミファイルが溜まっていきがちなのですが、なんとかこのゴミファイルにも意味を見出せないかな~と思い、Obsidian CanvasでかなりゆるいMOCっぽいものを作っています。 これが少しうまくいっている気がするので、簡単にご紹介できたらと思います。 > [!TOC]- 目次 > [[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#​1. PKMへの挫折と「ゴミファイル」問題|1. PKMへの挫折と「ゴミファイル」問題]] > [[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#​2. 「答え」ではなく「謎」を管理する|2. 「答え」ではなく「謎」を管理する]] > [[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#​3. 実践:Obsidian Canvasで羅針盤を作る|3. 実践:Obsidian Canvasで羅針盤を作る]] >>[[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#Step 1 中央に「Doingリスト」を配置する|Step1 中央に「Doingリスト」を配置する]] >>[[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#​Step 2 周囲に「謎」を配置する|Step2 周囲に「謎」を配置する]] >>[[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#Step 3 線で繋ぐ|Step3 線で繋ぐ]] > > [[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#4. 実例:ログを手がかりに変えよう|4. 実例:ログを手がかりに変えよう]] >> [[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#​ケース1:お気持ちメモ問題|ケース1:お気持ちメモ問題]] >> [[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#​ケース2:なんでそれ調べたのメモ|ケース2:なんでそれ調べたのメモ]] >> [[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#​ケース3:意外と解けていた|ケース3:意外と解けていた]] > >[[Obsidian Canvasで羅針盤を作ろう! - ゴミファイルを消さずに活かす#​5. まとめ|5. まとめ]] --- # ​1. PKMへの挫折と「ゴミファイル」問題 ​Personal Knowledge Management(PKM)かっこいいですよね。 自分の持っている知識を形として貯蔵し、それらがどうつながっているかを可視化する。「第二の脳」を作る。めちゃくちゃかっこいい! ただ、私のVaultにはがそのようなかっこいいメモがあまりありません。 それどころか、 - 「おなかいたい」「世界が平和になってほしい」などのお気持ちメモ - 「ダイラタンシー現象」「なすのアクはクロロゲン酸」について調べたログ(なんで調べたのかわからない) - 過去に熱中していたことについて調べたログで、いまは使っていない などのあまりイケてないメモが散逸している。 特に私は業務や勉強でObsidianで使っているわけではないため、このようなファイルが溜まりがち。うーん消したい。 いわゆる「ゴミファイル」問題はときどきObsidian界隈で話題になります(と思う)。 下記のブログ記事では、肥大したVaultを全部消した、という方の体験録が書いてあります。 <div class="rich-link-card-container"><a class="rich-link-card" href="https://www.joanwestenberg.com/i-deleted-my-second-brain-692aa40d59d5f06dd5131e43/" target="_blank"> <div class="rich-link-image-container"> <div class="rich-link-image" style="background-image: url('https://www.joanwestenberg.com/content/images/size/w1200/beehiiv-images-production-s3-amazonaws-com/uploads/asset/file/b405046b-6ee7-4e55-95f7-681f62bef38a/img_0128-t-1750026447.png')"> </div> </div> <div class="rich-link-card-text"> <h1 class="rich-link-card-title">I Deleted My Second Brain</h1> <p class="rich-link-card-description"> Why I Erased 10,000 Notes, 7 Years of Ideas, and Every Thought I Tried to Save </p> <p class="rich-link-href"> https://www.joanwestenberg.com/i-deleted-my-second-brain-692aa40d59d5f06dd5131e43/ </p> </div> </a></div> この方は私よりもずっと注意深くObsidianを運用し、Vaultを構築してきたと思われるのですが、それでも全部消したくなってしまう。 このような「第二の脳」がぐちゃぐちゃになるという問題は、 1. ファイルをなんのために貯めてるのかわかんなくなる 2. 移り変わった興味にVaultがついていけていない 3. 運用ルールが複雑 などの原因があるのかなと思います。 このような問題に対して、私がいますこし光明を見出しているのが、「答え」ではなく「謎」を管理しようという方法です。 # ​2. 「答え」ではなく「謎」を管理する ​ 私の提案は、 ==意味のわからないメモを知識(答え)として積み上げるのではなく、「謎の手がかり」と捉えなおすのはどうでしょう?== というものです。 私は謎解きゲームが好きなので、「謎」と「手がかり」というメタファーがしっくり来るのですが、「興味」と「行動」と言い換えてもいいかもしれません。 ​たとえば: - 「おなかいたい」というメモは、「自分が体調良く過ごせる条件とは何か?」という謎の手がかり。 - 「眠い」は「自分が一番コンディションのよい時間はどこか?」という謎の手がかり。 我々は毎日行動しています。そして、行動は何かを志向して行われます。 その何かは日々移り変わっていきますが、本来、我々はその「何か」のために調べもの、メモをとっていたはずです。再度その「何か」が何だったのか考え直してみるとメモに意味が見いだせるかも。 我々のメモはVaultに散在していて、「自分が今、なんの謎を解こうとしているのか」がひと目見ただけではわかりません。 内部リンクを貼る、MOCを作ることはある種の「謎解き」になると思いますが、内部リンクは一度貼ってしまうとそのネットワークを再編することは難しい。 同じ意味でグラフビューも、移り変わる自分の興味(=解きたい謎)や、まだ可視化されていない意図を見出すには不十分と感じました。 最終的に、「自分のいまの興味に基づいてVaultを整理する」目的にはObsidian Canvasがよいと思いました。[^1] # ​3. 実践:Obsidian Canvasで羅針盤を作る ​以上のような考えから、Obsidian Canvas上に「生活の羅針盤」を作っております。 作り方と考え方を書いてみます。 ​ ### Step 1: 中央に「Doingリスト」を配置する ​まず、現在進行形で取り組んでいることや、継続的な習慣をカード化してCanvasの中央に置きます。 なぜとつぜん現在進行系の行動の話がでてくるかというと、ゴミファイルはだいたいここから生まれるからです。 (たとえば私の場合だと、エッセイブログを書いていたり、ベランダ菜園をやっていたりします。 そのため、使っていないブログの下書きのネタがVaultに転がっていたり、あとで買おうと思った植物の名前のメモがあったりします) 私は生活直結型Obsidianユーザーなので行動の話になりますが、業務や勉強で使っている人は今やっているプロジェクトなどを配置するとよいのかなと思います。 例: - ​植物を育てる - ​Obsidian pubishで日記を書く - 今読んでいる本のタイトル - 日記を書く - 各地の顔はめパネルをなるべくやる ​これらは、日々の生活で「なんとなくやっていること」で構いません。 ![[Pasted image 20251203150546.png]]*なんとなくやっていることの例* ### ​Step 2: 周囲に「謎」を配置する ​次に、その周りに「最近考えていること」「困っていること」「やりたいこと」を書き出して配置します。これが我々が解くべき謎です。 5W1H(どうしたら? なぜ?)の形式になっていると、より謎っぽくなります。 「謎」と言われると何……??という感じですが、自分がなんとなくやっていることの理由を考えたり、最近なんとなくつぶやいたことや調べたことの目的を考えるとよいと思います。 ここでもゴミファイルが活きることがあります。 なぞのぼやきや愚痴を書いていたら、それがそのまま謎になります。 例: - 自分が体調良く過ごせる条件とは何か? - デイリーノートをやめたい - かっこよくPKMしたいけど全然私のノートにはテーマがない(この記事を書いた背景の愚痴です) - 共働き子育て中でもできる創作方法は何か? ### Step 3: 線で繋ぐ ​そして、中央の「Doingリスト」と、周囲の「謎」を矢印で繋ぎます。 「なぜ自分はこの習慣を続けているのか?」を考えると、意外な行動が、意外な謎に繋がっていることもあります。 ​![[Pasted image 20251203151534.png]] ​こうすると、Canvasが放射状の「羅針盤」のような形になります。 自分の行動が、どの謎に向かっているのかが可視化されるのです。 # 4. 実例:ログを手がかりに変えよう ​この羅針盤を使って、ゴミだと思っていたファイルやつぶやきを意味のあるものに考え直します。 いくつか私のVaultでの実例をあげます。 ### ​ケース1:お気持ちメモ問題 ​私のVaultには、「お腹痛い」というメモが大量に散らばっています。 お腹痛いときって「お腹痛い」とつぶやくことしかできないですね。 おそらく前後の生活習慣や、食べたもの、精神状態がお腹の状態に影響しているのだと思いますが、それについては特に書いていません。 ただその瞬間につらくて「お腹痛い」と書き捨てただけの、前後の脈絡がないメモです。 このようなメモを私は「お気持ちメモ」と読んでおります。 繰り返し同様のメモがある場合、うわー嫌だな、意味ないファイルだなと思ってしまうのですが、ここに「何か」を見出せないでしょうか。 「お腹痛い」でも「死にたい」でも「お金ない」でも「今日は最高!」でも「ObsidianのVaultが汚い」でも、ネガティブでもポジティブでもなんでもいいのですが、何かお気持ちが繰り返されていれば、そこに未解決の問題を見出すことができます。 たとえば「お腹痛い」が繰り返されているのであれば、「お腹痛くなるにはどうしたらいいのか?」がシンプルな謎です。これをCanvasに配置します。 そこから「自分の体調よい条件とは何か?」と発展するかもしれません。 ![[Pasted image 20251207220245.png]]*おっ、どうやら3カ月ごとに体調が終わっているらしい?と気づくの図* この謎をどう料理するかは自由なのですが、たとえばお気持ちメモがどの日に繰り返されていることが多いかを分析することができるかもしれないし、じゃあ食べ物も記録してみよう、と思うかもしれません。 謎がひとつできさえすれば、そこに脈絡のない色々なメモをつなげることができます。 ### ​ケース2:なんでそれ調べたのメモ ​過去に調べた「ナスのアクはクロロゲン酸」とか「ダイラタンシー現象」といった、脈絡のない知識メモがあります。 これらは、当時の文脈が切り離されてしまっているからゴミに見えます。そのときなぜそれを調べたのか、これを今の謎に紐付けられないか考えてみるとよいと思います。 「ナスのアク」はおそらくナスを料理しているときに調べたメモです。 いまナス、料理について自分が興味を持っていることはなんでしょうか? 私の場合、いまは「共働き子育てでも続けられる自炊方法は何か?」が謎だなあと思っています。 謎に沿ってナスのアクのことを考え直してみると: 共働き子育て中でも続けられるくらい楽なナスの調理方法ってあるのかな?ナスって冷凍してもアクが抜けないんだろうか?アクを抜いてから冷凍するとどうなるんだろう?クロロゲン酸ってどんな構造なのかな?熱で壊れるのかな? ![[Pasted image 20251207224135.png]]*ナスのアクについてやたら考えている図、「冷凍したらしわしわになる」そうだね……* こんなにナスのアクについて考える必要はないと思いますが、要は「文脈のないメモに文脈を与える方法はある」ということです。 もしどうしても文脈が見つからないなら、そのファイルはアーカイブディレクトリに移動すればいいでしょう。しかし後ほど新たな興味に紐付けられるかもしれません。 ### ​ケース3:意外と解けていた ​今の自分の行動が、意外な謎を解き明かしていた、ということも稀にあります。 ​「共働き子育て中でもできる創作方法は何か?」という"謎"についてうっすら悩んでいるのですが、Doingリストを見るとなんとなく日記を色々書いている・書くことに興味があることがわかりました。 ![[Pasted image 20251203154147.png]]*日記を書くのが大事だ!と気づいている図* 共働き子育て中でも日記は書けている、ということです。私のいまできる創作活動って日記なのかもしれない、と気づいた(いや気づけよ、という話かもしれませんが、、、)。 Canvasで自分の謎を定義すると、自分の行動の意味も再定義できるという例かなと思っています。 # ​5. まとめ 正直、Vaultにあまりにつまらんファイルを蓄積しているとこれって何、消したい、みたいな気持ちになることが多いです。 ただ、情報の要不要ってそのときのテンションで判断できるものでないのでは(どんなにそのときの自分にとっていらないと思うものでも)という気持ちがあります。 やっていることはほぼMOCだと思うのですが、どうにもMOCやダッシュボード、ホームページの形が自分には合わず、Canvasで整理してみたら意外と感触がよかった。 業務や勉強みたいなわかりやすい目的だけではなく、生活の向かっている方向みたいなのが示せる感じがして気に入っています。 なお、Canvasの管理方法はコンテンツが増えてくると、、、などけっこう問題点があると思いますが、「生活の羅針盤」という気持ちで接して、興味が移り変わったときには作り直せるのがいいなと思います。そうするとVaultを消すまでしなくてよくなるな〜と。 誰かの参考になれば幸いです! [^1]: ちなみに、ホワイトボード形式でメモを整理するという点ではHeptabaseも有名ですが、とにかくローカルにファイルを持っておける点がObsidianの強みと思います。外的要因でファイルが使えなくなったら元も子もないので……